【新幹線止めた火災、賠償請求できないの？】

新幹線止めた火災、賠償請求できないの？

正月3日、東海道新幹線を約5時間止めたJR有楽町駅近くの店舗火災。JR東海とJR東日本は損害賠償請求をするか検討中だが、JR幹部は「失火の場合は難しい」と明かす。明治時代にできた世界的にも珍しい法律が壁になるかも知れないというのだ。

　■影響３２万人、払い戻し次々

　火災は３日午前６時半ごろ、東京都千代田区有楽町２丁目の同駅付近で発生。東海道新幹線は正午ごろまで、ほぼ全線で運転を見合わせ、約３２万人に影響した。ＪＲ東日本でも山手線の全線、京浜東北線と東海道線の一部で運転を見合わせ、約２７万人に影響した。

　ＪＲの特急料金は２時間以上の遅れが出ると払い戻す。ＪＲ東海によると、３日は東京駅だけで乗車のキャンセルを含め約４千人が払い戻しを受けた。同新幹線の下りの通信ケーブルも損傷し、防音壁の一部も焦げた。損害は億単位に上る可能性もあるが、同社は詳細を明らかにしていない。


　■支払い命令１億円超す例

　ＪＲ東海はこれまでも、列車の運行が妨げられた際に損害賠償の訴えを起こしている。２００４年６月、滋賀県近江八幡市のホテルの屋根が強風で飛ばされて電線を切断し、東海道新幹線が約７時間停止したケースで名古屋地裁は０６年、「屋根の固定が不完全だった」として、払戻金など約１億１５００万円の支払いをホテル側に命じ、控訴審で同様の判決が確定した。

　０７年１２月にＪＲ東海道線の共和駅（愛知県）で、認知症の男性（当時９１）が線路に入り列車にはねられて死亡した事故では、名古屋地裁は昨年８月、遺族らに振り替え輸送費など約７２０万円の支払いを命じた。遺族側は控訴し、係争中だ。


　■「重過失か」明治時代の法

　今回、ＪＲ東海、東とも損害賠償を請求するか「検討中」とするが、ある幹部は「失火法で求償できないこともある」と話す。

　失火法とは１８９９（明治３２）年に制定された「失火の責任に関する法律」。木造家屋が多い国内で失火者の責任が過大になることに配慮して作られた。

　元白鴎大法科大学院教授で、ソーシャル・リスクマネジメント学会の戸出正夫理事長は「故意や過失で他人に被害を与えたら賠償責任を負うのが民法の原則。しかし失火法は、失火者が賠償責任を負うのは重過失の場合だけと定める。重過失の立証責任は被害者側にある」と解説する。日本にしかない法律だという。

　判例で重過失とされた失火は、燃えやすいものが多い場所でのたばこの火の不始末や、油の鍋を火にかけ台所を離れたケースなど。

　警視庁は３日の出火原因を半焼したパチンコ店にあった水槽下の電気配線のショートと断定。店から水槽の管理を委託された業者は昨年末の点検で異常がなかったとして、出火原因に異を唱えているという。

　ただ戸出さんによると、建物などの工作物の瑕疵（かし）で火災被害が発生した場合、その占有者や所有者が賠償責任を負うことを定めた民法に基づき賠償を命じる判決もあり、失火法との関係は定まっていないという。

　戸出さんは「個人的には、近代法の大原則に反して被害者の権利を阻害する失火法は廃止すべきだと考える。だが定着している同法の廃止は混乱を招くという専門家も多い」と話す。（上沢博之）

出所　：朝日新聞　　2014年1月10日　

【防災ワン店長コメント】
正月早々大きな火災が起こってびっくりしました。（少々時間が経ちましたが('-'*)）
新幹線を止めるほどの影響の大きい火災だったので人災はもちろんのこと賠償も大きいだろうなと考えておりましたが　失火法という法律があったとは驚きました。JRが賠償請求を起こしても裁判所での判決という事態になっていくのでしょうか？気になります。